スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

002 ゴムとは

身近なゴムには、輪ゴム、ボール、タイヤ、靴底、消しゴム(厳密に言うと少々違いますが)がありますし、少しマニアックなところでは、接着剤、免震ゴム、電線、パッキン・・・など、多数あります。 乱暴な言い方ですが、ゴムボールや輪ゴムのように引っ張ったら伸びて、離すと縮むのがゴムと見ておおよそあたりです。 で終わってしまうと、設計者向けの説明としては残念すぎますので、一般的に私たちが形を作るために使用する工業材料の視点から見てみます。 ゴムの立ち位置 工業材料には、金属、樹脂(有機高分子材料)、セラミック(無機高分子材料)があり、ゴムは樹脂に分類される工業材料です。 では、樹脂の中での位置付けを見てみましょう。 硬さの順に繊維、プラスチック、ゴム、塗料、接着剤と分けることができそうです。 ゴムとプラスチックの違い この中でわかりにくいのは、プラスチックとゴムの違いです。 違いは2つあって、一つ目は弾性の有無です。 弾性とは弾む性質のことで、具体例で言えば輪ゴムが伸びて縮む、あの性質です。 その弾性が通常の使用温度領域で持つのがゴム。持たないのがプラスチックという区分けです。 二つ目は流動性です。 柔らかい状態になった時に流動しないのがゴムで、流動するのがプラスチックです。 これを少し技術的な視点で見ます。 弾性については、ガラス転移点が何度にあるか?です。大体0度に設定することが多いのですが、0度以上にあるとプラスチック、0度以下にあるとゴムといった具合です。 このため、寒くなるとゴムもカチンコチンになってしまいます。 余談ですが、スタットレスタイヤは寒い環境でもゴム弾性を保つように配合がされています。 流動性については高度に発達した網目状構造を持つかどうかになります。網目構造になっていると、引っ張っても戻るのでこれが弾性になるのです。 ゴムの特徴のまとめ ここまで、樹脂の中での違いをみてきましたが、触れてきていない項目も含めたゴムの特徴を示します。 ・ゴムは弾性がある ・防振、緩衝作用がある ・温度依存性が大きい ・電気絶縁性である ・劣化が早い ・加硫を必要とする(一部例外あり) ・配合を必要とする(一部例外あり) このような性質を持っています。では、次回からゴムの種
最近の投稿

004 各種原料ゴムの基本的特性を見てみよう

 各種原料ゴムの基本的特性  ここでは前回出した3つ目の分類に従い、ゴムの基本的な特性を見ていきます。 3つ目の分類方法は、ゴムタイヤを中心にしたものと言えます。 自動車工業とともにゴムが大きく発展していきましたので、理にかなった分類だと考えています。 さて、自動車工業を始めとした各種工業の発展と共に様々な合成ゴムが多種類開発されました。現在は原料ゴムの選択の幅が非常に広くなっていますが、これらのゴムを大別すると以下の 3 つに分類できます。 一般用合成ゴム:天然ゴムおよび天然ゴムに非常に近い性質を持ち、安価で広い用途に使用されている。 準特殊ゴム:天然ゴムに無い性質を持っており、価格は若干高いが、工業用として広く使用されている。 特殊ゴム:非常に優れた特殊な性質を持っているが、価格が高く、工業用の特殊用途に限定して使用されている。  次回は、この分け方に従って代表的な原料ゴムについて、その分類と概略を説明していきます。

003 ゴムの分類方法

ここではゴムの基本的な特性を見ていきます。 ゴムの分類方法には、以下に示した5つくらいの方法があるようです。 1.天然ゴムと合成ゴム 2.主鎖の二重結合の有無 3.汎用ゴムと特殊ゴム 4.日本工業規格による 5.分子の組成や構造 1は歴史のある分類方法です。 ゴムはこれまで天然モノが大半を占めていましたので、使われる量を考えても自然な流れです。 2は機能上から出てくる分類です。 主鎖に二重結合があるということは、柔軟性やオゾンに対する性能などに大きな違いが出てきます。少し専門的な用語を使えばジエン系ゴムと非ジエン系ゴムということです。 3は、1の視点に工業での使われ方に視点を加味した分類です。 汎用ゴム、準特殊ゴム、特殊ゴムの3分類としていますが、汎用と特殊の線引きはタイヤに使われるか、そうではないかというところです。 4は、日本工業規格(JIS)による分類です。 文句無しの基準です。国際規格(ISO)をもとに制定され、用語、評価方法、など一連の分類があります。 代表的な規格としては、JIS K6397 原料ゴムおよびラテックスの略号、ISO1629 Rubbers and latices Nomenclatureなどがあります。詳しくは別のページで。 5は、モノマーの種類や配列による分類です。 ゴムの構造に注目した化学目線での分類になります。高校生程度の化学的知識を要求されますが、構造が図示されているので、視覚的に性能が見えるという利点があります。 ※参考 新版 ゴム技術の基礎 このブログでは、3の分類に5の視点を加えて展開していきます。 3は、歴史的、設計者目線からみてちょうど良い分類で、経験上、使い勝手も良く、さらに5の視点があると応用が効くようになります。 次以降で詳しく見ていきます。

001 ゴムの歴史を見てみよう

ゴムを理解するうえで、その歴史を知っておくことは専門家と話をするうえで有用でした。ゴムの発見から現代の合成ゴム全盛までの道のりをたどってみましょう。 ゴムの樹液を取る様子 ゴムが初めてヨーロッパの人目に留まったのは、コロンブスが第二回のアメリカ探索をしたときと考えられています(1943~46年)。コロンブスの一行が見たものは、原住民が遊びに使っていた弾力のある黒いボール状のものでした。しかし、6世紀のアステカ文明や、 11 世紀の南米マヤ文明に その痕跡があると推測されているように、それまでの相当長い期間、ゴム樹の生える地方では色々利用されていたものと想像されています。  1747年、フランス人によりゴム樹が発見されるころになると、現地ではゴム樹液(ラテックス)を布に塗って防水布を作ったり、土型に塗って中空の容器を作っていたようです。しかし、ゴム樹から得られたラテックスは極めて不安定であり、搬送中に凝固してしまうものでした。従って、ラテックスの利用は現地でしかできないため、西洋諸国におけるゴムの応用は進展しませんでした。  1759年になると、生ゴムが鉛筆で書かれた線を消すものとして利用できることが英国で見出されて、消しゴム=ラバー( Rubber )と命名されました。この Rubber は「こするもの」との意味に由来しています。西洋文明でゴムの用途を考えた第一号が消しゴムであったことは、事務機業界に携わった者としては奇妙な縁を感じます。  その後1823年ごろより、石油に溶かした生ゴムを布に塗って防水布を作る方法が考案され、これを契機としてゴム利用の応用が積極的に行われるようになりました。しかし、このような生ゴムをそのままを用いたゴム製品は安定性に劣っていました。夏は柔らかく冬はガチガチになるなどの硬度差が発生し、保存していると粘着するなどの不具合があったのです。そのため、積極的に使われるようになりましたが、その用途は制約されていました。    ところが、1839年アメリカのチャールズ・グッドイヤーが生ゴムに硫黄を練りこんだ後、熱を加えることによって前述の欠点が改善されることを発見して、近代ゴム工業の基礎を作ることとなります。余談ですが、前日に奥さんと喧嘩した反動で、半ば投げ

000.このブログの対象者と得られるスキルレベル

うももにおんは、大手の精密機械メーカーの技術者として10年ほど仕事をしたのち、現在は同じ会社の事業開発者として仕事をしています。 自分のスキルの棚卸しも兼ねて、かつて作成した新人設計者向けの教材を、違うスキルを得た今の視点で作り直していったらどうなるだろうか?というのが作り始めようとしたきっかけです。 対象とする項目は、ゴムの基礎的な技術知識です。 こんな人にオススメです。  仕事でゴムを扱うことになったけど、何から始めたら良いのか分からないという3年目くらいまでのメカ系の設計者。  化学の知識は高校で終了という方でも分かるようにします。 達成できるスキルレベルは?  ゴムメーカーの人が話す専門用語は何とか分かるようになって、何なら要望を出せるかもしれない位までに。 構成は、ゴムの歴史、定義、性質(種類・分類、使われ方)、評価、製造方法、使うにあたっての注意、協力工場での工程を確認するポイントを考えています。 気長に更新していきます。